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by kateido2000
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六尺褌

ちょっと過ぎたが、7月7日は私の叔父(母の弟)の命日。50台半ばで逝ったから、早世のほうだと思う。母と叔父とは2人姉弟。姪の私が言うのもナンだが、叔父はとてもハンサムだった。母は掛値なしの美人(娘が言うのもナンだが)だったから、美しい姉弟と近所からも言われたらしい。とりわけ叔父は彫りの深い顔立ちで、例えればロダンの「考える人」みたいな、ノーブルな顔。そんな叔父だが下穿きは断じて褌だった。真っ白い六尺褌が物干し竿にはためいているのは、別に私にとって珍しい風景でもなかった。叔父の連れ合いがぼやいていたのを思い出す。「パンツにしてくれたら洗濯も簡単なのに」。
家庭に洗濯機がやって来たのはいつだっただろう。幼稚園やそこらの頃は盥(たらい)と洗濯板で洗っていた。六尺もある褌を洗うより、そりゃパンツのほうが洗いやすかっただろう。それに叔父は育ちだけはお坊ちゃまで、褌の紐を男結びにしてしまい、ほどけなくなることが間々あったらしい。ほどけなくても用は足せる。隙間だらけなところが褌の真骨頂なのだから。紐をほどくのも面倒だと伯母がこぼしていた。そして伯母は一計を案じた。それは紐の部分をゴムにすることだった。叔父は最後まで伯母の特別誂えの褌をしていた。7月7日の早朝、伯母の悲鳴のような電話があって病院にかけつけた。すでにナースが清拭をはじめていた。チラリと白い褌が見えた。
by kateido2000 | 2007-07-25 01:47