好きな本、好きな映画、おもろい人々、泣かずに遊ぼ!


by kateido2000
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散歩のとき何か食べたくなって  by 池波正太郎

林真理子の「20代に読みたい名作」の中の一つ「散歩のとき何か食べたくなって」の東京偏「東京のうまいもの」を借りてきた。林真理子が書いている通り、現存する店は半分ほどに減っているらしい。現在でもかくしゃくと残っている中にはあの「資生堂パーラー」や「たいめいけん」がある。
池波氏は少年のころ(昭和のはじめ)株式仲買店の店員だった。月給は5円だったが、戦前の株屋においては使い走りの小僧さんにも過分なチップが出た。ときには月給の2倍3倍にもなった。つつましくすれば30円で家族3人が暮らせる時代、少年の身には分不相応な額といえる。

初めて資生堂パーラーを訪れた池波正太郎とその友人の会話である。

わたしは井上ともに先ず食べなれたポークカツをメニューから探したが、何とこれがないのだ。
「ね、ないだろう。だからおれは、チキンライスにしたんだ」
そこで少年のボーイをよんで、
「ポークカツある?」
「ございます」
「どこに?]
「ここに・・・・・・・」
と、ボーイが指したメニューの箇所には〔ポーク・カットレッツ〕と印刷してあるではないか。
「へーぇ。カツが、カットレッツかい」
「こいつはたまげたなあ」
とやりあう井上と私を、ボーイも、傍の客たちも笑いながら眺めている。


本誌の初版が1996年である。そこから14年の月日がたっているのだが・・・。そこにこうしたためてある。

資生堂パーラーのチーフは、46年間このパーラーで働いている高石鋭之助で、戦前の味を、
「数量的に、塩も胡椒も、これだけのものにはこれだけど、厳密に決められていて、意識的に壊さぬようにしているのです」。


以前私も書いたがここのチキンライスは絶品である。池波少年ら2人が資生堂パーラーのチキンライスを食べたとき・・・・。

「おどろいたよ、おい。チキンライスが銀のいれものに入って出て来やがった」
井上は、こういって瞠目して見せたものだ。・・・・・・・・・・・・・・・
はじめて食べた銀座の、資生堂パーラーの洋食のうまさは、もっと別(松坂屋の食堂のビーフステーキなどのことらしい)のうまさだった。

散歩のとき何か食べたくなって  by 池波正太郎_d0073646_21384027.jpg

                       
                               MENU
  コンソメー・野菜ポタージュ  (共に五十銭)
  舌平目フライ・バター焼き   (共に六十銭)
  伊勢海老のフライ・コールド(共に一円二十銭)
  チッキン・クルケット     (すなわちチキンコロッケで七十銭)
  ハムバーク・ステーキ    (六十銭)
  ホットローストビーフ・オントースト  (一円)
そしてわれらのチッキンライスが七十銭。定食が二円と三円だった。   


散歩のとき何か食べたくなって  by 池波正太郎_d0073646_2212821.jpg

by kateido2000 | 2010-05-01 21:38 | 好きな本好きな映画