ガン病棟のピーターラビット by 中島梓
2010年 09月 22日
「甘辛く作って」って言ったのに辛かったのだ。肉じゃがの色を一目見てすぐ「こりゃダメだ」と思った。薄口醤油が使ってあったのだ。「甘辛く作ってって言ったでしょ!ふつう肉じゃがは濃い口醤油でしょ!」と怒った。
で、この1冊の本にあって、そうした自分を猛省。
たかだか肉じゃが如きで、ほんっとあたしって小さいわ。それにしても肉じゃがは濃い口醤油だよね?黒々したのがおいしいよね?
中島梓は栗本薫という名前を持つていた、多才な作家。乳がんにかかって17年後、胆管ガン、すい臓ガン、肝臓ガンと転移していき去年亡くなった。
築地にあるガンセンターで過ごした日々がユーモアたっぷりに綴ってあって、たいそう面白い。ここまで自分を客観視できる人ってさすが作家でエッセイスト。(演出やピアノ演奏などもやっていた)。
彼女はこう書いている。
「自分が死んでからどうなるのか知りたい。自分が死んでから人がどういうふうにするのかも知りたい。死後の世界があるのかどうか、丹波さんが言っていることはどのくらい信憑性があるのか、そういうのほんとに知りたいなあ、。でも知れたときにはきっともう、皆さんにお話ししたりすることができないのかと思うと残念です」
全く同じことをあたしも時々考えます。
「わたしは幸せだなとあと思います。55歳までとりあえず生きてこられたから。窓を開けていると緑の風が入ってくるから、こうしてまたガンを抱えながらも元気にパソコンを打ち、好きな着物をまとって、窓辺の美しい赤と白のインパチェンスとハイビスカスと山アジサイを眺めていられるから。」
肝臓に転移したときに彼女は主治医から「あと半年、いやそこまでもたないかもしれない」と言われ「この後は1年とか長い単位で計画を立てないほうがいい。何ヶ月単位でものごとを計画していってください」と告げられた。そして彼女は「それでも私はガンで良かった」と書いている。それには色々な理由があるから、興味がある方は、そうでない方にも一読をお薦めします。