好きな本、好きな映画、おもろい人々、泣かずに遊ぼ!


by kateido2000
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覚えていない    by佐野洋子

<山小屋の渡辺淳一>
何故「山小屋」なのかといえば、佐野洋子とその友人さくらとが2人で面白いことして遊ぼ、と渡辺淳一の「うたかた」上下2巻を麓まで買いにいくからという単純な話しです。

かの斎藤美奈子、中野翠(どちらもライター)そしてあたしがさんざんコケにしてきた渡辺淳一ではありますが、ここまでコケにして、なお且つヒザを叩きまくり、大笑いした評論があったでしょうか。
うさ子へ・・・ここは書き留めておかなきゃ(図書館の本だし)と思ってコピーしたから読んでね。
「うたかた」という本を読んでないけど、心中したかしないかがあの「失楽園」と違うだけで、後はほとんど同じ。
渡辺淳一ってソレしかないの?って言うか、男って、ソレが服着て歩いてると思っても、ウン、間違いない。
ではでは!!

さくらさん上巻、私は下巻。「新しき情念の賛歌」さくらさんが叫ぶ。すかさず「激しく淫蕩な純愛、イントウにアンモラルってルビですよ」私がどなる。「人間を拘束するあらゆるものを振り捨てて謳う・・・・当代随一の華麗な筆致。どうだ」「斬新、典雅な背徳の世界、日本の美を追い求める男女が感覚する、豊潤な人生の至福。ですよ。すごいなあ」
ふたりで帯を読んでいるだけである。
私連は上下二巻を別々に読み始める。「ねぇ男がね教えるの“その先に見えるのが大島だ”」。宿屋でもったいぷって、〃大島だ”と教えている男を想像するとおかしい。
「キャー大変」私は下巻を読み上げる。「安芸は裾を左右に分かち徐々ににおしあげると二本の白い肢の彼方に黒々とした叢が見える。安芸はいったん手をとめ、それから懐かしいものに出合ったようにぅなずく」「あんなものの前で、うなずいている男って想像できます?」
「今度は食べ物よ。何だらかんだら“えんがわが添えられているのも嬉しい”嬉しいのよこの男は。“和食は目でも食べる”この男全部講釈たれるの」「女笑ったりしないしないの」「しないゎょ、“お料理もデザインですね”なんて答えるの」
「ちょっと、恥しくなってきたわよ、この男、着物着てでかけるわょ、真夏に、銀座四丁目に“白の上布を着て素足に草履を履いて家を出た〃やだこんな男と銀座あんた歩ける?やだ女も着物着てぎた。”岸約束どおり今夜の妙子は着物姿“でね“薄い藤色の紗の着物に白地に水草の浮いた帯を締めて涼し気である”よ。それで小料理屋と来たもんだ、それが日本の美を追い求めている男女ですよ、まいいか」「あんたね、私たちは文学するんじゃないんだよ、この男が何をするかだけでいいんだから、間違えないょうに」「何するってさ、こいつらやらしい事しに、早春の伊豆、桜の吉野、清爽の札幌、紅葉の室生、雪の阿寒にやたらもったいぶって行くだけじゃん、あんた、桜の花が咲けぱ日本の美なのかょ、紅葉があれぱいいのかよ、ただあるだけだよ」「だから文学するんじゃないって言ってるでしょ」「だって金にあかせてやたらもったいぶった高い旅館に泊まるだけだよ。それでやたら日本料理グルメしてウンチクたれて、それでうなずいているだけだよ。突然、小さい気取った旅館に行って〃ひなびていて悪くない”なんて言うの。この男やたら“悪くない”って言うの。口癖が〃悪くない〃」一時間で本を交換する。どこから始めても全然大勢に影響のない本であるのが嬉しい。悪くない。「ねぇどこが淫蕩なのょ、ただやってるだけじゃん。ねぇすごいところあったら教えて」
「駄目だよ、すぐ狂宴のあとってなってしまう,。モアーりポートのほうがリアルで淫蕩だよ。白い絹のじゅぱん着るとこどうよ」「ただ着てぬいでるだけで、男がひとり喜んでいる。それにしても大げさな男だね。“恋という煉獄"だってさ、ただの不倫だよ、“滅びるなら滅びてもいい”とかさ、今どき不倫位で、滅びる奴いるかよ、何でこんなマイルドセプンみたく売れるわけ?」
東京ドーム10個分の人間が、全部不倫願望に身をよじっている。それもほとんど中年のオッサン。そのオッサンたちは、人形みたいに、何考えているのかわかんない女をうっとり夢みてるんだ」「私ちがうと思う。これは女もうっとり夢みるんだと思う。この女変にふてぷてしいじゃん。女って全部ふてぶてしいじゃん、だけど風呂なんか恥しがって入らなかったりするふりするでしょ、すると男はそれを愛しいと思ったり奥床しいと思ったりするでしょ。それで男が金にあかせてグルメさせたり、高級宿屋つれてってくれると、ラプホテル『野猿』行ってラーメン食ぺるよりあらあ素敵って不倫するならこの位って思うから売れるんだよ」「でも何だか、まずい和菓子の過剰包装みたいな小説じゃん」「文学するんじゃない」「わかった、でも、金の糸でしぱったり、すかしの和紙とかむいてもむいても中身にいきつかない感じじゃん、中身はただのあんころもちで.角の鯛焼の方が本当はおいしいって感じしない」「文学するんじゃないって言ってるでしょ」

しぱらくしてさくらさんから電話がかかって来た。「あのさあ、又、会社に渡辺淳一の本がころがっててさ、又、読んじゃった」「えっ、あんた本当は好きなんじゃない。淳一さんじゃなくてスケべが」「そーかも知れない。人間みんな好きじゃん」「そーだね」「それで思ったんだけど、私、渡辺淳一尊敬しちゃった。この道一筋に命かけてるじゃん。今度ころがってる本ね、あんた三ベージも女の口の中から舌っぺろが出てこないんだよ。医者だもんで口の中の部分医学用語がいっぱいでて来て、三ベージたっぷり舌っぺろがどこさわったの、どこに移動したのって事だけがけ書いてあるの、でも読んじゃうんだよ。一回のキスでこんな長々と描写出来るのギネスブックものじゃない?偉い、もう偉い。何百万部売れても私しゃ文句言わない」

覚えていない    by佐野洋子_d0073646_2043916.jpg

by kateido2000 | 2011-09-07 23:53 | 好きな本好きな映画