タクシーの中のセクハラ by小倉千加子
2013年 09月 21日
年末には忘年会、年始には新年会と、冬の夜は連日「飲み会」がある。「飲み会」は職場の行事だし、管理職である以上、欠席するわけにはいかない。
「飲み会」はいつも終電がなくなる頃まで続く。その管理職はタクシーに部下を乗せて順番に自宅まで送り、最後に自分の家に戻るということをする。それを十回以上繰り返してきた。
管理職は女性だが、部下は全員男性である。前後不覚に酔っている男性たちを、ほとんだ酔っていなぃ上司が送っていくと、最後には部下と二人きりになる。
するとどんな男性でも彼女の身体を触ってくる。そして耳元で同じことを囁く。彼女の私生活への賢問である。家の近くに夕クシーが停車しても、部下は車から降りようとはせず、しつこく絡まりついてくる。
上司は部下を宥めたりすかしたりして、車からやっと降りてもらう。その時点で彼女は疲れきっている。
タクシーは彼女の自宅に向けてUターンする。運転手さんが叱りだすのはその時である。
「お客さん。なんでもっとちゃんと怒らないんですか!私がドアを開けた時に、男をドアから突き落とせぱよかったんだ。あんなに穏やか相手をしていたら、男はいつまでたっても止めないよ。お客さんには弱みにつけこまれところがある。銀座のホステスさんはもっと毅然としてるよ。これはセクハラだと怒鳴りつけないと男は目が覚めないんだ。なんでお客さんはそんなに性格が弱いんです?」
朝になると、部下から半泣きの声で長い言い訳の留守電が入っている。が、職場に行くと、いつも何もなかったような頗で対応してきた。
そういうことをする男性は普段は実におとなしく、仕事がとてもよくできる人物であるという。
その場にいる第三者、しかも男性が「これはセクハラだ」と言い、加害者も[セクハラをしてしまった]と侘びている。
叱責を四人の連転手さんからされてから、彼女は自分の性格について分析を始めた。「やめてください」と言えないのは上司であるせいだろうか。
一人の女性と二人の男性がいると、男性は女性を巡る他の男性のルール違反にとても敏惑になる。
男性運転手は立場上沈黙しながら、男性客をちゃんと監視している。
タクシーは女性にとって密室ではなく、教室であるのかもしれない。
アラサー女子とのおしゃべり中に私も暗澹とした気持ちになる。きちんとキャリアを積んでいこうと、志しのある女子に対してほどそういう気持ちになってく。
男はバカだ、といってしまえば簡単だけど、でもそれでも配偶者は見つけたい。それはゴビの砂漠みたいなとこから、あるかないかわからないいくばくかの砂金をさがすようなもんだ。
うっとりするようなダイアモンドはもうとっくに買い手がついてて、市場に出回っていないし、出回ってもどうゲットしていいかわからない。
ここまでくると、怖い話しだが「精子バンク」の提供が日本でも合法化されていくのかもしれない。
チョイスできるしね。顔よし、頭よし、性格よし。う~ん・・・・。