輪違屋糸里
2007年 10月 06日
「わてらを、斬らはるおつもりどすな」
糸里は腹の底から、鍛え上げた声を張りあげた。
「わても吉栄も、このえげつない欺し討ちの片棒をかつぎましたさけ、口が裂けても他言はいたしまへん。そしたらどないなわけでわてらを斬らはりますのんか、わけがあるなら言うとくりゃす」
土方は答えずに刀を構えた。
「音羽こったいを斬った芹沢先生にも、無礼討いう、たとえご無体にせよお侍らしいわけはありましたんえ。わてらにどないな無礼があったか、言えるもんなら言うてみなはれ。・・中略・・あんたはんはお侍やない。おなごと一緒に、田畑を耕してきたお百姓やからおなごがおとろしうてかなんのやろ。どや、土方はん。物が言えるなら、言うてみい。」
「どや、土方はん。お百姓のままでもええのやったら、わてらを斬りなはれ。どなたでもかましまへんえ。何どしたら近藤先生をお連れしてでも、おとろしうてかなんおなごを、口封じに叩き斬ればええ。そしたらあんたら新撰組は、晴れて天下のどん百姓や」
この決め台詞が聞きたかったのに~っ!と娘は怒る。「どん百姓」が放送コードに抵触するのかな?ここは浅田次郎先生も変えてほしくなかっただろうけど、ご時勢かな。
「やな渡世だな~。。」